コインの旅路 #01


 ここは、独立行政法人造幣局。俺ら硬貨が製造されている所だ。俺は今日ここで生まれた1円アルミニウム貨幣だ。
 エースナンバーを背負った、クールなシルバーメタリックのボディは身長20mm、体重1gの純アルミニウム。小粒だがピリリと辛い。(ライターで炙って)なめたら(舌を)火傷するぜ。

「おい、道を空けい。500円黄銅ニッケル貨幣様の御通りや。貴様みたい軽い奴がチョロチョロしてんなや、こら」
「は、はい(何だよ、偉そうにしやがって…)」
 仕方なく道を空ける。500円玉の野郎が丁度出荷される所みたいだ。道を空けたは良いが、チャリーンと肩に何かが当たった。
「痛いな、君。邪魔だよ、自販機にも入れないクズが」
「す、すいません」
 次は100円玉が通って行った。嫌な野郎だ。続いて、菊模様の着物の50円玉の姉御、赤ら顔の10円玉の兄貴、金ピカ派手好きの5円玉の姉ちゃんが通過。今日生産分の硬貨の出荷みたいだ。
 いよいよ俺も出荷の時。全国を裸一貫旅して回る予定だ。いつかはお前の財布に居候させて貰うかも知れないが、そん時はヨロシク頼むよ。
                              続


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