予知夢


 私は超能力者である。私の所有する能力は「予知能力」だ。即ち、これから起こる事が手に取るように分かるのである。今朝も見えてしまった。明日の午後三時頃に隣の女の子が誘拐される様が見えてしまったのだ。
 帰りの通学路、友達と別れてから、少女は、白いバンに乗った三十代の金髪の男に道を尋ねられる。少女は親切にも口頭で道を教えるが、男は「よく分からないから隣に乗って道案内してくれないか」と頼み、少女はそれに応じてしまう。そのまま連れ去られ、ロリコンの変態男に性的虐待を受けた上で惨殺され、川の土手にある林に遺棄される。その具体的な場所までが見える。
 睡眠中に、その一部始終が私の夢の中でフラッシュバックされる。私とて仮にも女の端くれなので、そのあまりにリアルな映像に吐き気を催し、トイレに向かった。
 そこまで分かっていて、何故それを阻止しようとしないのか。「仕事を休んで、その時間その場所で待機してそれを防げ。何もしないのは、不作為の不法行為と同じだ」と、非難される事だろう。しかし、予知した事を未然に防ごうとした事もあるのだが、自力で防ごうとすると、私が誘拐犯だと疑われ、他力に頼ろうにも取り合って貰えず、頭のおかしい女だと言われた事がある。それに、もし上手く行っても、未然である以上、一切感謝もされないのだ。

 私は日々、自らの無力を呪っている。中途半端に予知能力なんかを与えた神を怨んでいる。
 ギャンブル好きの人は、「競馬の予想なんか、百発百中だろう、羨ましい」と言うかも知れない。確かに生活には苦労しない。金には不自由しないが、全くもって面白くない。ただ生きて行けるだけで、幸せなど一つも無い。
 女の幸せの一つに素敵な殿方との結婚があるが、私はいまだに独身なのだ。というのも、私の子供の予知夢を見た事があるのだが、その子供が将来どうしようもない悪人になる夢だったのだ。だから、私は絶対に結婚しないし、完全避妊のセックスしかしない。
 大好きだった男が、生でしたいと言った時にそれを拒否したら、一気にその男は冷めてしまい、しばらくして別れる事になってしまった。勿論これも予知していた。愛しているのに、そして別れる事が分かっているのに、拒否せざるを得なかったのだ。こんなに辛い事があろうか。
 いっその事、死にたいと思う事もあるのだが、私が死ぬ予知は見た事がない。だから死ねない。

 そんな事を考えながらいつの間にか寝てしまっていたらしい。新たな予知があった。私の親友Sが、私の最愛の元彼と手を繋いで歩いている映像だ。
 新たな予知を目の当たりにし、台所に向かった白昼夢状態の私の脳裏には、私が刑務所に服役している映像が見えていた。
                       (了)2005/09/17


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