シミュレーションゲーム


 疫病が流行っているな。特効薬になる植物を発生させようか。
僕はコントローラを操作し、施しコマンドを選択した。この都市は科学レベル16に達しているから、科学者が特効薬を作るのも時間の問題だろう。
 
 僕が今やっているのは、とあるシミュレーションゲームだ。一つの惑星で、人類の誕生、文明の発生と順を追って操作して行き、都市を発展させて行くゲームである。僕は言わば神となっているわけだ。
 このように、人類に危機が訪れた時に、直接的な手を加えるのは無理だが、間接的に救う事は出来る。救うと、人類はこれは神の思し召しだという事で、信心ポイントが上昇し、僕に出来る選択肢の幅、威力が増えるというゲームだ。
 信心ポイントを上昇する方法は他にもあり、不道徳が罷り通ると、天罰という項目から、災害を発生させ、滅ぼしたり打撃を与えることも出来る。この場合も信心ポイントの上昇が期待出来る。言わば聖書にあるソドムとゴモラを焼いた神の火のような事が出来るわけだ。
 また、この天罰コマンドは、自分が操作する都市が他の都市等から侵攻された時に、敵を退ける場合にも使える。言わば元寇を退けた神風のようなものである。勿論、これには行動ポイントを消費するため、なかなか難しいのだが。
 この天罰コマンドはストレス解消にもなり、面白い。数字で表される人口が大幅に減少し、人々は神に許しを請う。日頃の鬱憤を晴らせる。

 画面を見ると、どうやら疫病が治ったようだ。良かった。しかし、気掛かりなのは、随分信心ポイントが下がっている事だ。
 科学を介する「施し」は消費ポイントが少ないが、科学万能主義へと思想が動き、信心ポイントが下がる場合がある。今回は思ったより下げ幅が大きかった。ムカ付いた。今日、親父からウザイ説教もされたし、機嫌が悪いんだ。
 僕は天罰コマンドを選択した。さて、何にしようか。疫病では、また科学万能主義が進んでしまう危険がある。文明がまだ発達していなかった頃は、疫病は効果覿面だったのになあ。
 僕は地震の項目を選択し、ボタンを押した。ははは、ざまあ見ろ。画面が揺れている。これが天罰だ。

 その時、本棚がガタガタ鳴り出した。地震だ。何というタイミング。大きいぞ。うわあああああああああああああああああああ……!!
 僕は倒れてきた家具の下敷きになった。これは、僕が起こした地震なのだろうか? 僕が起こした僕自身への天罰なのだろうか? と、思った。そして、僕の意識は遠くなって行った……
 2004年10月23日夕刻、新潟の出来事。
                              了


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