地獄の空に、一筋の糸。一筋の蜘蛛の糸。
これは地獄に落とされた亡者への救いの糸です。
芥川龍之介の小説に「蜘蛛の糸」という有名な話があります。
極悪人のカンダタという人物が地獄に落ちました。とは言え、どんな極悪人にも多少の長所があります。このカンダタは嘗て「小さな蜘蛛にも命がある。無意味に殺すのは可哀想だ」と、蜘蛛の命を助けた事がありました。その一点に、カンダタに悔い改める余地があると判断した釈迦如来は極楽から地獄に蜘蛛の糸を垂らし、救おうとしました。
糸にぶら下がり天に昇るカンダタでしたが、そのカンダタの下に他の亡者たちが我も我もと掴まって来ます。それを見て糸が切れるのを危惧したカンダタは、自分だけが助かろうとして、その亡者たちに罵声や蹴りを浴びせました。
その様を見て、カンダタを救おうとしたのは誤りだったと思った釈迦如来は糸を切ってしまい、カンダタは地面に叩き付けられます。
……と、大体こんな筋の話です。
という訳で、ここではこの地獄三丁目駅に垂れる一筋の蜘蛛の糸として、
個々人の生まれ年に対応した【守り本尊】を紹介致します。
@【守り本尊】とは何か?
基督教でいう所の守護天使のような存在であり、自分を守ってくれる存在と言えます。それぞれの干支に対応した仏があり、誰にでもいずれかの守り本尊があります。
A【守り本尊】は全部で8種類
干支ではあっても12種類というわけではなく、子、丑寅、卯、辰巳、午、未申、酉、戌亥の8種類です。これは干支よりも方角や時刻で考えると理解し易いと思います。
子は北(または24時)を指し、午は南(12時)を指します。地球儀の経線を子午線なんて言うのもこのせいです。よって、例えば丑は北北東、寅は東北東となります。
この方角は合わせて北東として「丑寅の方角」と言いますから、守り本尊でもその配置となります。
B【守り本尊】の仏にはどんな種類があるのか?
以下、8種類それぞれの特徴等を記載致します。
尚、それぞれの写真をクリックしますと、写真の銅像や仏画についての頁に行けます。おまもりとして、御自身の守り本尊を持っておきたいと思われた方は、そちらで御購入も可能です。
※電脳卸経由
【子】千手観音菩薩
いわゆる「観音様」である観音菩薩の一形態です。
「観音菩薩」自体が、「観世音菩薩」や「観自在菩薩」等色々な訳され方をされている上、変化観音と呼ばれる異形態が数多く存在し、「六観音」や「三十三観音」という数多くの変化があります。その中でも最も壮観な姿をしているのが、この「千手観音」(別名:千手千眼観音)です。
梵語では【サハスラブジャ・アーリア・アヴァローキテーシュヴァラ】と言い、「千の手を持つ、全てを見る者」(「千手」の部分が「サハスラブジャ」で、「千の手を持つ者」の意)という意味です。千の手でどのような衆生をも漏らさず救済するという慈悲と力を表しています。
千手観音の真言は、
【オン・バザラ・ダ・ラマ・キリク・ソワカ】。
【丑寅】虚空蔵菩薩
梵語では【アーカーシャ・ガルパ】と言い、「虚空を体内に秘める者」といった意味で、文字通り「虚空を蔵する者」です。虚空とは宇宙空間を指し、広大無辺な慈悲と智慧を持つ事を表しています。智慧については、次の文殊菩薩や普賢菩薩も長けていますが、それぞれ異なるニュアンスの智慧です。私は、虚空蔵が広い智慧、文殊が深い智慧、普賢が機転の利く智慧といった感じで捉えています。
虚空蔵菩薩の真言は、
【オン・バザラ・アラタンノウ・オンタラク・ソワカ】
【卯】文殊菩薩
正式には「文殊師利菩薩」で、梵語では【マンジュシュリー】と言い、実在の人物名が元になっているそうです。「三人寄れば文殊の知恵」の言葉通り、菩薩の中で最も優れた智慧を持つ存在とされています。
左の写真のように獅子に乗った姿で描かれる事も多く、この、智慧で獰猛な獣を手懐けている様子が「核高速増殖炉もんじゅ」の名前の由来になっています。
文殊菩薩の真言は、
【オン・アラハシャナ・マン】
【辰巳】普賢菩薩
梵語では「サマンタ・バドラ」と言い、「普く賢い者」という意味です。普く世界に現れて人々を救う存在です。文殊菩薩が静的智慧とすると、普賢菩薩は動的智慧といったニュアンスでしょうか。
左の写真のように象に乗った姿で描かれる事も多く、この、智慧で獰猛な獣を手懐けている様子が「新型核転換炉ふげん」(現:原子炉廃止措置研究開発センター)の名前の由来にもなっています。
普賢菩薩の真言は、
【オン・サンマヤ・ザトバン】
【午】勢至菩薩
梵語では【マハー・スターマ・プラープタ】と言い、「大いなる威力を得た者」という意味です。その光で一切衆生を照らします。智慧と力を併せ持ち、文武両道といった存在です。
勢至菩薩の真言は、
【オン・サン・ザン・ザンサク・ソワカ】
【未申】大日如来
梵語では【ヴィローシャナ】と言い、「全てを光でを照らす者」という意味です。全てを光で照らすという言葉から、大日という名を付けられていますが、宇宙そのものの人格化した存在です。
尚、奈良の東大寺の大仏は「毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)」という仏像であり、「びるしゃな」=「ヴィローシャナ」を指しています。
大日如来の真言は、
【オン・アビラ・ウンケン・バザラ・ダドバン】
【酉】不動明王
梵語では【アチャラナータ】と言い、「動かぬ守護者」という意味です。大日如来の化身と言われています。言うなれば、如来が通常モード、菩薩が懐柔モード、明王が戦闘モードといった感じでしょうか。その犬歯は、怒りの余り、片方が捻じ曲がって左右上下逆を向いています。
不動明王の真言は、
【ノウマク・サマンダ・バザラ・ダンカン】
【戌亥】阿弥陀如来
梵語では「アミターユス」と言い、「無量光」または「無量寿」という意味です。現世と来世をより良いものにするために導く存在です。
「南無阿弥陀仏」の念仏が有名で、特に浄土宗・浄土真宗で重んじられている存在です。
阿弥陀如来の真言は、
【オン・アミリタ・テイセイ・カラウン】
【註】説明の左にある写真は、ネットショップにリンクされていますので、
クリックすると、そちらに移動します。
おまもりとして買える安価な仏画色紙(上)とミニ仏像(下)です。
蜘蛛の糸(仏像等)